腰椎分離症・分離辷り症
腰椎分離症・分離すべり症ってどんな病気?
腰椎には椎体と呼ばれる前方の臼の様な部分と、椎弓と呼ばれる後方の輪の様な部分があります。
この椎弓の一部で骨の連続性が絶たれ、椎体と椎弓が離れてしまった状態を腰椎分離症といいます。
さらに腰椎分離症の中で、分離部が大きく離開して椎体が前方にずれてくるものを腰椎分離すべり症といいます。
昔は腰椎分離症は先天性疾患と言われていましたが、その本態は成長期に過度の負荷がかかって起こる椎弓の疲労骨折である事が判明しています。
腰椎分離症・分離すべり症の症状
腰椎分離症・分離辷り症の主な症状は腰痛です。
運動時、動作時に生じる事が多いですが、安静時に痛みが出る事もあります。
高齢者の変性すべり症に比べれば頻度は低いものの、分離すべり症に進行して馬尾神経や神経根が圧迫されると下肢の痛みやしびれが生じる場合もあります。
腰椎分離症・分離すべり症の原因とは
腰椎分離症のほとんどは10歳代の成長期に激しいスポーツなどの過度な負荷がかかって起こる椎弓の疲労骨折です。
この疲労骨折が自然に癒合せずに、いわゆる偽関節の状態になって骨が分かれてしまったものが分離症です。
中学・高校生でスポーツをされる方の腰痛を軽視すべきではありません.分離が形成された時期には気付かずに、大人になってから腰痛を自覚して、初めて分離が形成されているのが分かる事もあります。
分離症・分離辷り症は第5腰椎に発生する事が多く、全人口の4〜8%が分離症を有していると言われています。
分離症の中でどのような場合に分離すべり症に進行するかは完全には解明されていませんが、いくつかの解剖学的な特徴などが報告されています。
腰椎にすべりを来す他の疾患としては、先天的な腰椎の形成不全に起因する稀な形成不全性すべり症と高齢者に発症する変性すべり症があります。
形成不全性すべり症では高度のすべりに進行する頻度が高く、変性すべり症では脊柱管狭窄による下肢の痛み・しびれ、間欠性跛行が生じる事が多いです。
腰椎分離症・分離すべり症の検査と診断
問診、理学所見に加えて、X線検査が必須です。
分離症の診断にはX線を斜めから撮影する斜位撮影が有効です。
さらに分離部の状態を正確に把握するためには、CTやMRI検査が必要になる場合が多いです。
腰椎分離症・分離すべり症の治療法
治療には保存療法と手術療法があります。
保存療法はスポーツ活動の制限などの安静、コルセット(本人用に採型するもの)の装着、薬物療法、理学療法があります。
X線で分離がまだ明らかでなくMRIを撮ると椎弓内に信号変化がみられる分離の前段階では安静のみで治癒する事も多いです。
またX線やCTで分離がはっきりしていても、MRIで炎症所見がみられる段階では、分離部が癒合する事を期待して数ヶ月の安静やコルセット装着を行います。
逆に分離が完成してしまっており、安静をとっても癒合が望めない場合には、周囲や体幹の筋力強化で分離部の安定化を図ります。
これらの保存療法で症状が改善しない場合や、すべりが高度で下肢の症状がある場合などには分離部の固定を行う手術療法が考慮されます。