腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?
椎間板は脊椎の各々の椎体の間にある軟骨性のクッションです。
これが様々な要因で変性して後方に飛び出してしまった状態が椎間板ヘルニアです。
これが腰椎に起きると馬尾神経や神経根を圧迫して、腰痛だけでなく下肢の痛み・しびれが生じます。
よく坐骨神経痛と言いますが、これは症状を指しているのみで、原因としては腰椎椎間板ヘルニアが最も多い疾患です。
青年期・壮年期に発症することが多く、慢性的なものから急に症状が増悪する場合もあります。
腰椎椎間板ヘルニアはスポーツをしている方だけではなく、日常生活動作の中で発症することも多いため一般の方にも身近な疾患です。
腰椎椎間板ヘルニアの原因
椎間板ヘルニアの発症原因として加齢、日常生活習慣、姿勢、スポーツ活動、遺伝的要素などが関与していると言われていますが、何か一つの原因を特定する事はできません。
腰椎椎間板には、座る・前かがみになるといった姿勢や動作で体重の約2.5倍の圧力がかかります。
長時間の車の運転、中腰での作業、重いものを持つなど腰への負担が大きい作業は腰椎椎間板ヘルニアを発症したり症状を悪化させる要因となります。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
腰椎椎間板ヘルニアの症状としては、腰痛、下肢の痛みやしびれ、下肢の力が弱くなる運動麻痺、感覚が鈍くなる知覚麻痺などが挙げられます。
症状はある動作に伴って生じる場合もあれば、安静時にも痛みがあり睡眠障害を来す事もあります。
痛みが強いと跛行を生じたり、起き上がることもできず日常生活に支障を来します。
運動麻痺を伴う場合には、足首に力が入らずスリッパが脱げてしまったりします。
また椎間板の突出が非常に大きく馬尾神経全体を圧迫するような場合には排尿・排便に障害が起きる事もあります。
腰椎椎間板ヘルニアの検査と診断
腰椎椎間板ヘルニアの診断には、痛みの性状などの問診、徒手検査などの理学所見、運動・知覚検査が行われます。
レントゲン検査では椎間の狭小化や不安定性が間接的に椎間板の変性を示唆しますが、実際の椎間板の変性や突出の程度、神経の圧迫状態を調べるにはMRI検査が必要になります。
必要に応じて、入院した上で脊髄造影検査や神経根造影検査を行う場合もあります。
腰椎椎間板ヘルニアの治療法
腰椎椎間板ヘルニアの治療には保存療法と手術療法があります。
ヘルニアが突出したままでも神経根の炎症が収まれば症状は改善される事がほとんどなので、基本的には保存療法が選択されます。
また椎体後方の靱帯を突き破って突出したヘルニアは自然吸収される場合もあります。
保存療法には以下の様なものがあります。
1 薬物療法
消炎鎮痛剤やビタミンB12などを投与します。
近年では痛みを伝える神経伝達物質の過剰放出を抑える薬も使用される機会が増えています。
2 理学療法
腰椎牽引、干渉波などの物理療法に加え、腰椎周囲筋の強化やストレッチ指導によって腰椎の安定化を図る運動療法が行われます。
3 神経ブロック
ブロック注射には仙骨裂孔から行う硬膜外ブロック、神経根造影を行いながら行う選択的神経根ブロック、麻酔科・ペインクリニックに依頼して行う硬膜外ブロックなどの種類があり、症状に応じて選択します。
これらの保存療法を行っても症状が緩和されない場合や、運動麻痺を伴っている場合に手術療法が選択されます。
手術は突出した椎間板を摘出する方法が主体ですが、近年では内視鏡などを用いて手術侵襲を最小限にする手技が開発されています。